年をとったら
アイルランドが生んだ天才、W.B.イェーツの詩篇に「When You Are Old」というものがある。
『年をとって円熟し まどろみがちになったら
暖炉のそばでこの本を手に取り
ゆっくり読んで 思い出してごらん
かつて持っていた和らげな瞳と その面影を
どれだけ多くの男があなたを愛しただろう
それが本心からだったかは分からないが
ただあなたの移ろいやすい心と 悲しげな影を 本当に愛した男は一人だけだった
燃え盛る薪の前に身を屈めて
少し悲しげに呟いてごらん
そんな愛も山の彼方へと消え去り
星屑の中に消えてしまった、と。』
(拙訳)
確かこの詩を暗唱できるようになったのは高校二年の時だった。その時はまだ、物悲しげな詩だな、くらいにしか感想がなかったが、大学に入ってからというもの、外が寒くなってくるといつもこの詩を思い出した。外の冷気よりも、この詩篇の文字列が辛辣に心に沁みていたはずだ。
今日、部活の練習を終え居酒屋で酒を飲んでいると、またこの詩篇を思い出した。
同席者と別れ、一人電車に乗りながらこの文章を書いている。感傷的になるには早過ぎる。感傷的になっていいのは全てを諦めた時だけだ。